「死ぬまでに観たい映画1001本」なる書籍を購入した。映画好きの知人の影響があったのと、どんな映画が選ばれているのか興味があったからだ。それなりに評価されている映画が、幅広い視点で選ばれているように感じた。なので、この書籍で選ばれている映画に駄作はないのだろう。
「E.T.」「エイリアン」「スターウォーズ」「ターミネーター」「バック・トゥー・ザ・フューチャー」「2001年宇宙の旅」「ブレードランナー」「メトロポリス」など好きなS.F.が選ばれているが、「アンドリューNDR114」「インターステラー」「A.I.」「エクス・マキナ」「タイムマシン」「チャッピー」「フィフス・エレメント」「復活の日」「ルーシー」などのS.F.も個人的には好きだ。宮崎駿監督の映画は「千と千尋の神隠し」が選ばれているが、大林宜彦監督の映画が1つもないのは個人的には納得いかない。なので、この書籍で選ばれていない映画にも面白いものは沢山あると思う。映画の世界はきっと無限だ。
一方で、この書籍には知らない映画が幅広い視点で選ばれているので、観なかったであろう映画に出合うチャンスでもある。この書籍に載っている映画「トッツイー」を観たが、意外と面白く、観て良かったと思う。
それから映画鑑賞日記を書いてみた。権田保之助も映画が好きで、1929年(昭和4年)3月22日から7月2日まで映画鑑賞日記を書いている。
今回、映画を沢山観て感じたことは、映画を観なくても死ぬことはないが、映画は面白く、ワクワク・ドキドキで、生活を楽しいものにしてくれるようだ。映画の舞台の時代背景、文化、宗教など、いろいろと知らないと、映画を観ても深いところまでは分からないように思った。では、そういったことを知らずに映画を観てはいけないのだろうか。
映画解説者の淀川長治は以下のように言っている。「映画は人生の教科書です」。映画は娯楽として楽しむのが普通だが、淀川さんは、映画は単なる娯楽とは思っていない。映画は人間修業の場、現代の教室なのである。だから構えて映画を観るが、気負わず自然体である。「いい映画を選んで何回も何回も観ることが大切だ」「映画は監督中心で観てほしい」とも言っている。
映画好きの知人も「好きな監督を見つけてその監督の映画をいろいろと観ると、映画というものが分かってくる。他の監督との繋がりが見えてくる」と言っていた。淀川さんが尊敬した監督は、チャップリン、ヒッチコック、ジョン・フォード、ルキノ・ヴィスコンティ、フェリーニなど。「映画をアタマで観たら、つまらない。感覚でみてほしい」とも言っている。どうやら淀川さんと映画好きの知人の言葉にヒントがありそうだ。
[以下、私の映画鑑賞日記(2021.6.1~6.30)]
ほとんどがTV、録画、DVDであるが、この1か月で20本の映画を観た。学生の頃は池袋の文芸座でオールナイトの名画を観たが、今ではなかなか映画館へ行かなくなってしまった。
〇2021.6.2 DVD視聴「カリガリ博士」(1919年、ロベルト・ヴィーネ)
・背景が手作り的で舞台演劇のようだ。
・怖さの演出・表現に芸術的な味があり、意外な結末で面白かった。
・ドイツ映画であるが、劇中に表示される文字が英語であった。
・権田保之助のお気に入りの映画で、以前から観たいと思っていた。
・権田保之助は1921年にキネマ倶楽部で封切されたのを見損ない、渡欧中1925年にベルリンで上映されたのを見損ない、1929年3月29日にシネマ・パレスでやっと観ることができた。権田保之助が見たカリガリ博士は徳川夢声による活弁だったのだろうか。
・権田保之助は観客の様子も観察しながら映画を味わったようだ。
・映画解説者の淀川長治もドイツ表現主義の素晴らしさを讃えている。
〇2021.6.3 TV視聴「時をかける少女」(1983年、大林信彦)
・以前観た時とは印象がかなり違った。
・大林宜彦の尾道3部作の「時をかける少女」が特に好きで、原作(小説)を読んで、TVドラマ、アニメ映画、演劇(キャラメルボックス)も観た。それぞれ良さがあり、演出も工夫されていて比較してみるのも面白い。
〇2021.6.4 TV視聴「ボヘミアン・ラプソディー」(2018年、ブライアン・シンガー)
・ライブを観ているような迫力。
・We are the champions やっぱりいい。
〇2021.6.5 ネット視聴「街の灯」(1931年、チャップリン)
・チャップリンのコミカルな動き、表情、さすがだ。
・コメディの中に笑いと感動あり。
〇2021.6.7 TV視聴「トッツイー」(1982年、シドニー・ポラック)
・見るべき1001の映画にあったので、ちょうどTV放映されたので観た。見るべき1001に載っていなかったら、多分観なかった。
・意外と面白かった。
・ダスティン・ホフマンの演技がいい。また、レインマンを観たくなった。
〇2021.6.8 TV視聴「炎のランナー」(1981年、ヒュー・ハドソン)
・以前から観たいと思っていたので、TV放映されたので観た。
・英国の伝統を感じる。見た後の後味が良い。
〇2021.6.11 TV視聴「グーニーズ」(1985年、リチャード・ドナー)
・以前から気になっていた映画。
・ブラウン管TV、自転車でつるんで出かけるシーン、秘密の隠れ家的な懐かしさがある。
〇2021.6.12 DVD視聴「メトロポリス(完全復元版)」(1927年、フリッツ・ラング)
・マリア、皆兄弟、十字架、バベルの塔、ヨハネ黙示録。「頭脳」と「手」を心が繋ぐ。キリスト教を感じる。
・過酷な労働環境と支配者層の優雅な生活。今も昔も変わらない。
・扉が異常に大きい。
・権田保之助は1929年4月9日に浅草松竹座で封切されている「メトロポリス」を観た。映画鑑賞日記では「その技巧は兎に角素晴らしいものだが、内容は余り豪いものではない。尤も資本主義文化の頂点を描写せるものとしては、比較的に面白いものであろう」と感想を述べている。メトロポリスは1927年にベルリンでドイツ国内上映版が上映され、その後短縮された輸出用プリントがアルゼンチンを除く海外で上映されたので、権田保之助が見たメトロポリスは短縮版だったのだろう。アルゼンチンでは1960年代終わり頃までオリジナルに近いものが上映されたようである。当時のアルゼンチン版フィルムが2008年に発見され、2001年の復元版にさらに25分の映像が追加されたのが完全復元版である。
・映画解説者の淀川長治もスターウオーズのC3POよりも美しいと讃えている。淀川長治は監督のフリッツ・ラングに会っている。
〇2021.6.13 ネット視聴「人情紙風船」(1937年、山中貞雄)
・漫才のようなテンポの良い会話。
・江戸時代の長屋の生活が伝わってくる。
・玄関のカギなし。同長屋の人の情報は筒抜け。近所の人との助け合い、分かち合い、自宅での通夜。
・なんとも悲しい結末。
〇2021.6.15 録画視聴「月世界旅行」(1902年、ジョルジュ・メリエス)(活弁)
・活弁の話が面白い。
・弾丸ロケットで月へ行くなんて。しかも宇宙服を着ないで。
・月世界人まで出てくるとは。
〇2021.6.16 録画視聴「サタデー・ナイト・フィーバー」(1977年、ジョン・バダム)
・BEE GEESの曲が懐かしい。
・以前に観たが内容を全く覚えていない。
・フラッシュダンスが観たくなった。
〇2021.6.17 録画視聴「小さな恋のメロディー」(1971年、ワリス・フセイン)
・メロディ・フェアの曲が懐かしい。
・ダニエルとメロディの初々しさが良い。
・カメラワークがいい。
・名画だといえる。
・ダニエルのお母さんがトッツイーに似ている気がする。
・以前観たとき(1984.1.21)、一番見たかった映画、2つの世界の重なり、コメディチック、というコメントを残している。
〇2021.6.19 映画館「Hokusai」(2021年、橋本一)
・久しぶりに映画館で映画を観た。
・映画が始まる前の予告編が懐かしい。
・映画館は他の人と映画を共有する場だと改めて思った。
・「Hokusai」は観たいと思っていた映画なので、前評判は良くなかったが観に来た。
・なるべく先入観なく、無心で観ようと思った。
・純粋に面白かった。北斎の生きざま、生活、版元との関係、絵師の描く姿、浮世絵が刷り上がるまでの工程などとても興味深かった。
・人物の実在期間から場面設定に無理があるとの専門家の指摘あり。
〇2021.6.19 CATV「ブレードランナー2049」(2017年、ドゥニ・ヴィルヌーヴ)
・以前観た時は内容を理解していなかったことに気付いた。
・ハリソンフォードが人間かレプリカントか、未だに分からない。
・謎めいたところも本作品の魅力の1つかも知れない。
〇2021.6.21 録画「市民ケーン」(1941年、オーソン・ウェルズ)
・予想外の始まり方
・モノクロの美しい映像世界
・オーソン・ウェルズの迫力あるスピーチ
〇2021.6.22 録画「北北西に進路を取れ」(1959年、ヒッチコック)
・カメラワークがいい
・展開が素晴らしく、ワクワク、ドキドキ
・さすがヒッチコックといった感じ
〇2021.6.23 録画「ノイズ」(1999年、ランド・ラビッチ)
・軽く観られる映画かと思ったが、意外と重い内容だった。
・宇宙飛行士が帰還中、背後から襲われて宇宙生命体に寄生されて、地球との通信が7分間途絶えてしまうSF映画「スピーシーズ2」(1998年、ピーター・メダック)に似ている。
〇2021.6.28 DVD「バグダッドの盗賊」(1924年、ラオール・ウオルシュ)
・舞台芸術のアート。ドイツ映画「カリガリ博士」を意識したか。
・アラーの予言、魔法。空飛ぶジュータンがいい。
・ファンタジーで単純に楽しめる。
・権田保之助は1929年(昭和4年)7月2日に浅草の電気館でこの映画を観ていて「綺麗な映画で技巧もうまい」と感想を述べている。当時は活動弁士による解説付きだったのだろう。
・映画解説者の淀川長治もこの映画を評価している。淀川長治は監督のラオール・ウオルシュに会っている。
〇2021.6.29 DVD「黄金狂時代」(1942年、チャップリン)
・チャップリン本人のナレーション付きの映画である。
・「うそでしょ」と言いたくなるくらい面白い。
・チャップリンのコミカルな動きは素晴らしい。
〇2021.6.30 DVD「黄金狂時代」(1925年、チャップリン)
・オリジナルのサイレント版である。ピアノ曲がいい。
・悲しさあり、笑いあり、一途な恋がいい。
・チャップリンの身のこなしが凄い!
・チャップリンは多才なことに気づいた。
・映画解説者の淀川長治はチャップリン映画の中でこの映画が一番好きなようである。淀川長治はチャップリンに会っている。