権田保之助ん家

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講演「大衆娯楽研究の先駆者 権田保之助」が行われました

令和5年3月4日~6月11日にさいたま市立博物館で開催されている特別展「近代人の休日」にて、坂内夏子氏(早稲田大学教授)による講演「大衆娯楽研究の先駆者 権田保之助」が3月12日に行われました。

特別展「近代人の休日」

講演「大衆娯楽研究の先駆者 権田保之助」

[講演概要]
・明治以降の近代化により「余暇」という概念が誕生し「娯楽」が盛んになった
・「民衆娯楽」研究の先駆者として「権田保之助」がいた
・娯楽の教化・改善・取り締まりが行われる中、権田保之助は「政策としての民衆娯楽は、事実としての民衆娯楽に即さなければならない」という立場をとった
・権田保之助の略歴、著作、調査(東京市活動写真調査、月島調査、倉敷工場労働者娯楽調査、浅草調査)、先行研究(日本人と娯楽研究会、大原社研で公開されたデータベース)の紹介
・今、なぜ権田保之助か?(コロナ禍の文化・楽しみ・憩いは不要不急か)
・権田保之助の視点・問題意識(原書だけでなく実際の現場から学ぶことも大切)
 「民衆娯楽の原書は丸善にはありません、浅草にあります」
・「人間生活の創造の為」の娯楽は?(例えば、趣味、やりがい)


[聴講者からのご意見など]
・倉敷アイビースクエア(旧倉敷紡績所)へ行った際に、女工さんの雙六があった。大原社研の創立者である大原孫三郎は、工場労働者の娯楽をどうイメージしていたのか知りたい。
・日本人と娯楽研究会「権田保之助研究第4号」などを大原社研で閲覧したい。
・倉敷工場労働者娯楽調査報告がされた1920年は、1960年前後の高度経済成長での「生活もレジャーも全て企業任せ」という問題と繋がる。
・文部省の民衆娯楽調査、文部省の教育映画調査の結果が、現在の世の中にどう関わっているのか。
・権田保之助の社会的な影響はどのようなものだったのか。
・近代の民衆娯楽の歴史を説明してもらえると思っていた。
・権田保之助の著作を大正当時購入した人は、一般大衆ではなく、専門の研究者や学生だったのか。
・仕事が趣味ですと言う人、趣味を極めて仕事化する人もいると思うが、仕事と趣味が融合していくことについてどう考えるか。


[雑感]
・講演冒頭に講師から「権田保之助という名前を聞いたことがある人はいますか?」と聞いたが、挙手したのは聴講者15人中1人(私だけ)でした。権田保之助は一般的には知られていないことを改めて実感しました。
・初めて権田保之助について聞く人に、分かりやすく説明することの難しさを感じました。
・権田保之助は、当時、一般の人にも広く知られた学者だったのか、専門家や特定の分野の人に知られた学者だったのか、知りたいと思いました。
・権田保之助の生きた時代は第1次産業、第2次産業が盛んな時代であり、労働と娯楽を分けて考えたが、現代は第3次産業が盛んであり、第3次産業においては労働と娯楽が融合していく可能性が高いという示唆を得ました。
・今回の講演は、権田保之助について一般の人に知っていただく良い機会だったと思います。


[追記]
 特別展「近代人の休日」では、活動写真などのパンフレットやチラシ(明治~昭和)、映画雑誌(昭和初期)、内国勧業博覧会関連資料(明治10年、14年)、東京オリンピック関連資料(昭和39年)、日本万国博覧会(昭和45年)のパンフレットや写真、錦絵、蓄音機などの現物が展示されています。