権田保之助ん家

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木彫「かつを」の作者川上邦世を評価する権田保之助

権田保之助は大正5年6月に「建築工芸雑誌」に「置物彫刻の将来」を投稿しており、その中で木彫「かつを」の作者である川上邦世について述べているので紹介したい。

 

[以下、抜粋]
・日本将来の置物彫刻を形成する、当面の人として、光雲、雲海、朝雲の3氏は、ここに敬意を表していわないが、殊に注意すべき3人がある。即ち内藤伸、川上邦世、平櫛田仲の3氏である。この3氏は各々長所も短所もあって、将来が大疑問であるだけ、それだけ将来が非常に面白い。

・川上邦世氏は、内藤氏とは反対である。氏は日本国民性情のある一面を能く同感している人であると思う。内藤氏のは時代生活の表面であるが、氏のはその一面と云いたい。部分的同感であると云いたい。そしてこの部分的同感に、非常に深いところがあるのが特長であって、氏の作品に接すると、ある一種のアトラクションを感じるのも、ここに有るのであろう。けれどもこの得点はまた失点であって、内藤氏のように躍動していないから、徹底的の大観を有している。そして其の結果として、作品に遊びの分子が多い。部分的低回の弊が、どうしても離れないようである。だから氏は大に時代生活を徹底的に解釈して、動いている上に、更に氏の国民性情を発露したならば、有望なる将来があるように思う。

・3氏共に未成品である。日本の置物彫刻の完成したるものとは、荀旦にも云い得るものではない。この3氏が大に自分の将来に向かって、殊に日本の置物彫刻の将来を考えて、各自其長短を理解し、美しい将来の開展を希望するものである。